愛とは、孤独とは
1988年/ポーランド/87分
監督: クシシュトフ・キェシロフスキ
出演: グラジナ・シャポロフスカ、オルフ・ルバシェンク
男は望遠鏡に映り込む向かいのマンションに住む女の生活を覗き込む。
彼は孤独だ。友人は1人いるが駐屯地に勤務しており、男は友人の母親と暮らしている。
郵便局の仕事を終えれば語学書を広げ、決まった時間になると望遠鏡にかかる布を下ろして女を見つめる。
生活に変化は無かったが、1年間見続ける事で女への気持ちは大きくなっていった。
女は芸術家だろうか、キャンパスが部屋の中央に陣取っていて時折絵具のついた筆を落とす。
女は一見華やかな生活を送っている。
高級な服を着飾り、夜な夜な部屋に遊びの男を招き入れては夜を過ごしている。
ある日男は女に言った、"愛している"
"愛してる、なんて久しく言われていないわ"
"…"
"私と寝たいの?"
"いや"
"じゃあ私とデートしたり旅行に行ったりしたいの?"
"いや"
"じゃあ何?"
"愛している"
後に女は部屋に男を招き入れ、妖艶に迫る。
"これが世間で言う愛の正体よ"
純粋な愛情は絶望に打ちひしがれ、その絶望は部屋を飛び出した男の身体を傷つけさせた。
自分の部屋を覗く視線が消えた事で女は不安と焦燥感を感じ、窓に向けて電話を差し出したり自身の作品の裏側に後悔の言葉を書きなぐり窓に貼りつけるが、男からの連絡はない。
うなだれ部屋で物思いに耽る女は男が恋の病で手首を切った事を知り、病院から帰る男を見るやいなや男の部屋へ駆け込んだ。
男の部屋の望遠鏡を覗けば、そこには失恋に苦しむ自分の肩にそっと手を差し出す男の姿が映っていた。
本当に孤独だったのは、身体の関係に本物の愛があると思い込み、心を交わしていなかった女の方だったのだ。
想うこと、想われること、孤独、愛について俯瞰的、普遍的に撮られた素敵な映画でした。
クシシュトフ・キェシロフスキはポーランド出身で、ロマン・ポランスキーも然り、名監督が多いのでしょうね。
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